糖尿病は、インスリンの作用が不十分であるために血糖値が高い状態となることが原因で生じます。
血糖値が高い状態が続くことで、全身の血管を傷つけ、様々な臓器障害・糖尿病合併症を引き起こします。
インスリンは膵臓という臓器のランゲルハンス島という部分にあるβ細胞というところから分泌され、血液中の糖分(ブドウ糖)を体の細胞に取り込ませます。体の細胞は取り込んだ糖分をエネルギー源💪として利用しています。
インスリンが分泌されると、血液中の糖分が細胞内に移行し、血液中の糖分は少なくなるため血糖値が下がります。
インスリンは、食後などの血糖値が高くなったときには分泌され、空腹時のように血糖値が低いときには分泌されないため、血液中の血糖値を保つ働きがあります。
そのため、インスリンの作用が不十分だと血糖値が高くなります。
インスリンの作用が不十分となるのは、次のような場合があります。
- インスリンの分泌が少ない場合
- インスリンの作用が低下している場合
①インスリンの分泌が少ない場合
膵臓のβ細胞からインスリンの分泌が少ない場合、血液中の糖分を十分に下げることができないため、血糖値は高くなります。
膵臓に自己免疫や感染などにより炎症が起こり、β細胞が破壊されていくとインスリンの分泌ができなくなっていきます。遺伝や加齢もインスリン分泌機能に影響していますが、肥満などによる酸化ストレス、高血糖の持続によるβ細胞の疲弊もβ細胞の機能を低下させ、インスリンの分泌機能低下をもたらします。
インスリンがほとんど分泌されなくなった場合には、インスリンを注射等で補わなければ生きていくことができません。このような状態を「インスリン依存状態」といいます。
②インスリンの作用が低下している場合
細胞がブドウ糖を取り込むインスリンの作用が低下すると、血液中の糖分が筋肉や脂肪など体の臓器に取り込まれていかないため、血糖値は高くなります。
インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下し、インスリンの作用が低下してしまっている状態を、「インスリン抵抗性」といいます。
インスリン抵抗性の主な原因は、過剰な摂食と肥満です。
過剰な摂食により血液中の血糖や脂肪酸の濃度が高くなることにより、インスリン抵抗性を引き起こします。
また、過剰な摂食は脂肪細胞の増大をもたらし肥満となります。脂肪細胞が増大すると、脂肪細胞からインスリン抵抗性を引き起こす物質が放出され、インスリン抵抗性を引き起こします。
さらに、インスリン抵抗性の状態では、血糖を下げるためにより多くのインスリンが必要となり、血液中のインスリン濃度も高い状態となります。血液中のインスリン濃度が高い状態(高インスリン血症)は、インスリン抵抗性を引き起こします。
このような状態が続くと、インスリン抵抗性がさらに高まるだけでなく、インスリンを分泌する膵臓β細胞の疲弊や細胞障害によりインスリンの分泌が減るため高血糖を招き、さらなる悪化をもたらしていくことになります。
このように、高血糖そのものが、インスリン抵抗性を増強させたりインスリン分泌低下をもたらし、高血糖を増長する悪循環を形成する状態を「高血糖毒性(糖毒性)」といいます。